胸突き八丁/vs.ヴェルディ

朝9時半を回った頃に飛田給を下りたら、人の多いこと多いこと。
味スタへ向かう両側の歩道がこんなに混んでいるのは最近じゃ珍しいなあ……と感じたが、それもそのはずで観衆3万5911人は昨年一番多かった鹿島戦の3万672人を大きく上回っていた。

駅前踏切横にあるなじみの店で鳥の唐揚げと焼きそばを買っていこうと思っていたのだが、店頭のテーブルの上にはまだ何も置かれていない。
腕組みして立っている店主に「おじさーん、今日はダービーだよ。こんなに人がいるのにもったいないよ〜」と言いたかったけどやめておいた。

今年これまでのJリーグ1、2合わせた全試合でも10番目の大入りだったようだ。
10月の埼スタで行われた浦和ホームのさいたまダービーよりも多いとのこと。
不安視されたアウェイゴール裏もどうにか埋まり、内容的にも互角に近く(いや、東京が劣勢だったな)、まずまず東京ダービーの名にふさわしい試合となった。今度ダービーやれるのはいつのことかしらん。

それでもやはり、勝ち点3ではなく勝ち点1に終わってしまったのはとても残念だった。これで3試合連続して勝てていない。
今シーズンは3試合続けて白星なしというのが2回あり、1回目は震災による中断再開直後、2回目は8月下旬から。

1回目は3戦勝ちなしの次節に富山戦で涙の羽生ゴールがあったが、そのつぎの草津戦に敗れた。選手ミーティングで話し合った結果、つなぐサッカーに切り替えて好調モードに、という例のあれだ。
2回目は栃木戦、富山戦と連敗し、栃木と再戦するも「今度こそ」の期待もむなしくドローに。しかしその次節の京都戦大勝を皮切りについこの前までの7連勝へと、見事な切り替えを見せた。

今シーズンの東京はこのように大小の谷を越えて1年でJ1復帰、昇格という高い山の頂上が近づいてきた。
で、何を言いたいかというと……なんだっけ。じゃなくて、言いたいことはこれ。
大小の谷を越えるたびに、東京は確実に強さを増しつつある――ということ。
誰かにリードされて漫然と谷を渡ったのではなく、自分で考えながら先を見据えて乗り越えてきたからこそ、その強さは身に付いた。

そしてまたもややってきた、3回目の3試合連続白星なし。
今度のは谷ではなく、山の頂上近くに必ずといっていいほど出てくる急勾配の登り。胸突き八丁というやつである。
「さあ頑張れっ、胸突き八丁だ!」
高校で所属していたワンゲル部顧問の先生は、頂上が近づくと決まってこう声を張り上げた。

次節湘南戦にはキャプテン今ちゃんがいない。先発ボランチの梶山も秀人もいない。
この状態で胸突き八丁をいかにして越えていくのか、不安というより大いに期待したい。
「監督の手腕の見せどころ」という見方もあるだろうが、むしろそれ以上に「選手たちの強くなってきた心技体の見せどころ」という視点で見つめ、声援を送りたい。

ここを越えられれば、チームも選手個人もさらに強くなれるに違いない。
今シーズン、これまで2回の3試合白星なしを越えて強くなってきたのと同じように。

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【2011 J2 第33節/味スタ/35,911人】 東京1-1ヴェルディ [得点者/前半45+1分ルーカス・後半16分オウンゴール]