柏の北嶋を観て、俺たちの平松を思う

ギコギコガシガシと自転車のペダルを漕いで帰宅し、汗だくの体を水シャワーで流してテレビをつけると、NHK1チャンネルの画面にはタイミングよく? 「アスリートの魂」の再放送が始まった。

「勝負の“ワンチャンス” 柏レイソル 北嶋秀朗」というタイトルがの内容。
数日前にこの番組が放映されていたのは知っていた。
だから当然、これが再放送であることも分かっていた。

現在のJ1の首位をひた走るのは昨年のJ2覇者・柏レイソル
ベテランFWの北嶋がその柏を引っ張る選手の1人といって異論はあるまい。
このドキュメンタリーは北嶋を追ったものだ。

全国優勝2度の市立船橋を経て柏入りした北嶋。
エリート選手の名に恥じぬ活躍の後に訪れた怪我の連続、そして移籍、そして復調に至らず長く続いた挫折。
そんな長い苦労の歳月を経て古巣の柏に戻り、持病の膝に負担をかけない形のプレースタイルに変更して得た“復活”。
本番組は苦心の日々を経ていま再び体感しつつあるプロサッカー選手そしての喜びの模様を追跡している。

文句なしに伝わってきたのは「大きな怪我を繰り返しつつも、よくぞここまで」との驚きにも似た感心。
さらに頭をよぎったのは、柏サポーターとの精神的な一体感の強さが彼に諦めることを許さなかったのだなあという思いだった。

そして番組が終わりを迎え、何人かの選手たちの顔、ユニフォーム姿が思い出された。
いま、我らが東京にも大きな怪我を抱えて試合にも出られることなく、静かに回復へ向けての療養・リハビリの時間を過ごす選手が複数名いる。

吉本はどうやらピッチに戻ってきたものの、重傷でまだしばらくピッチに戻ってこれなそうなのが平山、ヨネ、高松、ホベルト、そして忘れちゃいけないのが平松。
6月下旬、小平に返ってきたルーカスを見に行ったその日、他の選手の居残り練習をよそ目にピッチの周囲をウォーキングする平松の姿を見た。
正確には分からないが、あの感じだとまだ当分はボールを追いかけて走るわけにはいかないと思われる。

「歩くペース、ちょっと遅くないっすか〜」
ある若手選手から平松に対し、冷やかしを装った励ましの声が飛ぶ。
「えっ、いーの! 十分ハイペースだよっ」
チームメイトからのひと言で、暑さのなかで真剣な表情だった平松の表情に笑みが浮かんだ。

味スタのピッチに立つ日を目標に頑張れ、平松。
北嶋のように、けっして諦めることなく。
十八番の“エア乾杯”が見られる日を待ってるからね。