羽生に乾杯!/vs.富山


後半36分、谷澤とのコンビネーションで羽生がシュートし、ゴールイン! みんなが待ちに待ったゴール、そして勝利。試合後、ヒーローインタビューを受ける羽生は途中から涙を見せ、ユニホームで何度も目頭を拭うのにはこちらも心を動かされ、ひさびさに涙腺がちょいとばかり緩んでしまった。

あの瞬間、降格が決まったあの日から数日間のオフを経て天皇杯に向けての練習を再開した師走の夕方、小平グラウンドでファンサービスに応じていた羽生の表情がオーバーラップしてしまった。

あの日の小平は人影もまばらだった。シャワールームから出てきた羽生はそのままクラブハウスへ向かいかけた。ん、今日はどうしたのかな……と思った矢先、1人の女性から「はにゅうさーん、サインお願いしまーす」と声が飛んだ。

その声で帰りかけた足を翻し、ファンサエリアへやってきた。女性はサインをもらうと、「ありがとうございます。天皇杯も、それに来年1年でJ1へ戻るように応援します!」と声をかけた。そのときの羽生は「はい……」と小さな声で答えるのがやっとという感じに見えた。困惑したような、とても複雑な表情で。
昨日、試合後の涙の場面でダブったのは、まさにその顔だった。

ムービングフットボールの具現化を目指して東京へ移籍してきたが、その完成を見ることはできないどころか、心酔した監督は解任され、チームはJ2降格という最悪のシナリオが待っていた。この事実に対する衝撃は測りしれない。それでもとにかく羽生は東京に残った。残ってくれた。羽生の責任感の強さがそうさせた。

東京に完全に残留を正式に決意し、自身のブログに深く悩んだ日々が続いたことを打ち明けたのはそれから約ひと月後だったろうか。それ以来、昨日の試合後のコメントもそうだったが、羽生の発言には東京応援者の胸にしみる言葉が多く含まれている。

最近よく口にしている「チーム内ではオッサンだけど、プレーの方は老け込まずにいく」みたいな言葉を聞くと、自分のようなリアルオッサンは大いに共感し、勇気づけられてしまう(笑)。これからもオッサンパワー全開で東京を引っ張っていってもらいましょう。

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【2011 J2 第11節/味スタ/14,174人】 東京1-0富山 [得点者/後半36分羽生]