準決勝へ/vs.福岡(天皇杯)


上州から吹く名物のからっ風は絶好調、北側スタンド裏手に望む日光連山は頂が白い。北関東の寒さは釣りに行くことが多いので慣れてはいるが、東京側のゴール裏ときたら入場したときから日が沈むまでずっと日陰だったので、さすがに寒さが身にこたえた。

隣りに座った女子高生らしき2人はキックオフから終了までずっと「寒い寒い!」を繰り返していた。スカートなんだもんなあ、いくらなんでもつらいよ。前に座っていた女性から「よかったらこれ」とホッカイロを渡されてたけど、使ってなかったみたい。

肝心の試合の方も開始からずっと寒かった。早い時間にいつものように一瞬のスキをつかれて感じで失点を許し、それから福岡には守りを固められて攻めあぐねるまま時間は過ぎていった。

「このまま終わるなんて冗談じゃないっ」と声を出し続けたが、さすがに半ば観念した矢先にナオゴールが飛び出した。隣りの女子高生もこの時ばかりは寒さが吹き飛んだようで、「やった〜〜〜〜」と甲高い声をあげながら前後左右周りの人たちみんなとハイタッチを交わしていた。

東京の勝利の立役者は文句なしに石川。先発してほしかったのだがサブからのスタートで、大熊監督がいつ出してくるのかが気になった。いつだって気合い十分な石川だが、試合後のコメントを読んでも今回ではいつも以上に特別だったようだ。

「最後の最後まで絶対にあきらめない」という言葉は言うことは簡単だが、それをプレーに現わし、結果に反映させることは難しい。ナオはこの試合でそれをやってのけた。しっかりと空気を変えた。



↑ロスタイムも残りワンプレーというタイミングで飛び出したナオの同点弾。これで延長に入ったときには東京の勝利を確信した。結果はその通りになり3−2の逆転勝ちで準決勝へ。応援者にとっては最高のクリスマスプレゼントとなった


決意をもって臨んだ今回の天皇杯。降格のショックからは抜け出しただろうが、シーズン中とまったく変わらない試合運びにはジリジリさせられた。3週間の練習で急に生まれ変わったような戦い方が身につくことはないだろうとも思う。

このあたりは選手というより、熊さんの問題だ。来年3月のリーグ戦開幕までには必ず監督なりの戦術やビジョンを浸透させてもらわなければならない。今のままじゃ、来季は厳しい。「全勝で昇格」なんて、シャレであっても口に出すのが恥ずかしいほどの冴えない試合内容だった。

次の準決勝はすでに2日後に迫っている。相手は鹿島、舞台は俺たちの国立と、いい条件が揃った。鹿島ぐらいのバリバリのJ1上位が相手ならば、語弊はあるが、負けを恐れることはない。思い切った気持ちで立ち向かってもらいたい。

天皇杯での東京に面白いサッカーは望んでいない。期待するのは福岡戦のナオのように、「けっしてあきらめない」気持ちをプレーに現わし、結果につなげることだ。それが自信につながり、J1復帰を目指す来季へ向けてのいい滑り出し、序章となる。

それにしても、どうにかして鹿島には勝ちたいものだ。一昨年の準決勝も同じ12月29日で、柏に敗れて決勝進出の夢が砕け散った。今回もあのときと同じで、12月27日現在で元日の予定は【コクリツ/天皇杯決勝】以外に何も考えていない。