映画『レフェリー』を観て

5月末から公開され、ずっと観たかった映画『レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏』が11日で上映終了になってしまうので、遅ればせながら一昨日、渋谷のアップリンク・ファクトリーへ駆け込みで行ってきた。

この映画は2008年ヨーロッパ選手権時のレフェリーの姿に焦点を当てたドキュメンタリー。UEFA公認であるため、試合中だけでなく私生活の部分まで踏み込んだ形で撮影し、レフェリーが抱くリアルな心理状態や想像を絶するプレッシャーの様子をメインに描いている。

中心登場人物のイングランドハワード・ウェブは、ヨーロッパのベストレフェリーにも選ばれている主審。通信システムを使って副審との試合中の会話のやり取り、試合後の本人および家族や仲間などの言動を通し、レフェリーの苦悩と喜びが十二分に伝わってきた。

正確かつ勇気あるジャッジと、試合の行方を左右しかねないミスジャッジへの恐れとは常に表裏一体。EUROやW杯のようなビッグタイトルを懸けた国際試合では、ひとつの誤審が国家を大きく揺るがす大事に発展することもあり得る。それは今回のW杯を観てもよく判ることだ。

本映画のイブ・イノン監督が「私はかつて誰も目を向けなかったものに対して目を向けたかったのです」と語る通り、世界中で注目されるビッグマッチであろうとも、選手のプレーよりもレフェリーの動きを中心にサッカー試合を観戦する人はごく一部に限られているだろう。

この映画を観て、知られざるレフェリーの世界を少なからず理解できた。今回のW杯でも明らかな誤審と話題になったあの試合この試合。思い返せば疑惑を通り越して不信感、もっと言えば憤りすら感じたこともあったが、少々考えが改まった部分もある。やはり開会前に観ておきたかった。

さてそのハワード・ウェブ主審だが、いよいよ差し迫った決勝戦オランダ対スペインで笛を吹くことになった。『レフェリー』を観たばかりなので、どことなく感慨もひとしお!? である。映画の中に登場したお父さんやお母さんは自慢の息子の快挙に大騒ぎにちがいない。奥さんはこんなふうにちょっと辛めの発言をしているようだけど(笑)。

正確はもちろんのこと、勇気とヒューマニティに満ちた素晴らしいジャッジで大会を締めくくってもらいたい。明日深夜キックオフのW杯決勝はお互い初優勝を懸けた戦いに注目すると同時に、ハワード・ウェブの動きにも目を向けるつもりだ。見事第4レフェリーに選ばれた西村氏には、この経験をJリーグで存分に生かしていただこう。


■この映画をまだご覧になっておらず、興味があるという方にはぜひおすすめいたします。といっても、本日11日が最終日なのですが……(13時開始と15時開始の2回上映)。
【7/11訂正加筆】下記のコメントの通り、延長して12〜16日まで、同じビル2階のアップリンクXで上映されることになりました。