PK戦に代わるものはないのだろうか?

W杯は準々決勝が終わり、ベスト4が確定した。フランス、イングランド、イタリアといったヨーロッパ強豪が予選リーグで姿を消したのに対し、南米勢は4チームがベスト8まで残り、「もしかしたらベスト4はすべて南米勢か!?」との声も聞かれた。が、結果は逆転してヨーロッパ3、南米1となった。

ブラジルの自爆的敗退、アルゼンチンの歴史的大敗で南米2強が去り、史上最強メンバーを擁して「今度こそ優勝」との呼び声高いスペインが苦しんだ末に勝利を手にした。どれも「最も激しく、面白い」と言われる準々決勝らしい熱戦だったが、一番心に残ったのはガーナ対ウルグアイだ。

延長後半の終了まぎわに相手のハンドでPKを得たガーナ。これが決まると同時に試合終了の笛が吹かれ、地元アフリカで唯一残ったガーナ、劇的な勝利でベスト4へ――。誰もが疑わなかった場面だったが、ガーナFWギャンが蹴ったボールはクロスバーに当たり失敗。その後のPK戦によりウルグアイがベスト4へ進出し、ガーナのW杯は終了した。

外国ではPK戦に至る試合は引き分けという認識で一致しており、あくまでもくじ引きに代わるものだという。勝負の決し方としてはあまりにも残酷。再試合するのがいいに決まっているが、単純に時間的・日程的に難しいということだろうが、なんとかPK戦に代わる手段はないものかと、直面するたびに考えてしまう。

W杯でPK戦が初めて採用されたのは82年スペイン大会からで、準決勝の西ドイツ対フランスで実施されたらしい。その頃は大学生だったし、すでにW杯にも注目していたはず。にもかかわらず、PK戦の場面は観た記憶も読んだ記憶もない。第一に問題なのは自分の記憶力の悪さなのだが、弁解するならやはり現在のようにテレビ中継が発達していなかったためだろう。

これもやはりはまったく記憶にないことなのだが、PK戦採用以前はコイントスやくじで勝負を決めていたという。ふーん、そうかなるほど。これは意見の分かれるところだろうが、どうしても再試合できないのなら、別にコイントスだっていいと思ってしまう。何かいいじゃないですか、同じ「運」で決まるのならPK戦より後腐れなさそうで。

イタリアで「悪魔の儀式」とか呼ばれるあの重苦しい雰囲気は、相当心臓によくない。GKやキッカーには過剰な精神的負担がかかるし、結果いかんではサポーターから失敗した選手に対する個人攻撃にも発展しかねない。キック前にGKが動いただのなんだのというケースも困りものだ。中には「そんなPK戦が大好きだ!」という人もいるかもしれないが……。

ではそれ以外に何かあるかな、とちょっと考えてみる。距離や方角を何ヵ所かに分けて、PK戦ならぬFK戦はどうか。あるいはキーパーのゴールキックで直接ゴールを決められるかどうかを競うのはどうだろう。あとはやっぱりリフティング競争とか……時間がかかりすぎるな。ダメだ、発想が貧困でくだらないことしか浮かばない(苦笑)。

いまだにPK戦廃止論はしっかりあるようで、現にオシムもそのひとりだ。よく知られている話だが、監督時代はPK戦開始前にロッカールームへ引き上げてしまい現場を見ない人だった。先日の日本・パラグアイ戦後にもまた「PK戦は勝負の決し方としていかがなものか」といったようなコメントを残していた。

死力を尽くして戦った結果のドローという結果は尊いものである。それでもやはり競技会とあれば、何らかの手段で勝者敗者を決めなければならない。ならばどうするか。けっして勝負を軽視するわけじゃないけど、僕はやっぱりコイントスでいいかも(笑)。話は違うが、勝負を重視するならぜひ、ビデオ判定の採用を急いでほしいものだ。