あしたのために

パラグアイと120分間戦って互いにスコアレス、そしてPK戦で敗退。多少大げさに言えば、「ベスト8まで進むことが、この代表チームが急スピードながらも進化したことの本当の証」と思うところがあったので、悔しいし残念でした。

とはいえ現実的に試合を見れば、やれることはほぼやりきった結果であり、日本サッカーにとって価値のあるW杯でした。監督の岡ちゃん、コーチ、全選手に心からおつかれさまと言いたいです。

わずかにパラグアイが優勢気味ながらも、ほぼ互角のまま得点が入らない試合展開。重苦しい雰囲気で迎えた後半終了まぎわになって、中村憲剛を入れたのは意外でしたね。一瞬「ん!?」となりました。

しかしプレー再開して感じたのは、中盤でボールを前線にうまく散らせる憲剛をいれたことで「岡ちゃんは延長で決めるつもりでいる」という強いメッセージ。「よし、いこうぜ」という気持ちになる意味のある交代だったと思います。

PK戦が終わった後も、実にこのチームらしい光景がずっと見られました。どん底近くまで落ちてから開き直り、そこから誰ひとり脱落させずに全員で這い上がってきたメンバーの結束、一体感という点では、これまでの代表の中でも最強でしょう。

終了後、長谷部が「今回の選手の多くはJリーグに所属しています。ぜひJリーグに足を運んでください」と力強く話してましたね。自分自身はドイツでプレーしているというのに……。素晴らしいコメントです。

代表だけしか見ない人をJリーグサッカーに引き込むには、W杯後のこれからが一番のチャンスタイム。中断明けの再開でどれだけ興味を持って見に来てくれるか、ファン層を拡大し観客を増大できるか……って、2002年日韓W杯後と同じ課題ですね。

ここ3週間ぐらい身のまわりに急増した日本サッカーファン。身につけた知識も豊富で、うっかりすると「長友のスタミナは並はずれたフィジカルトレーニングによるものなんだよ。その方法は……」なんて、こちらが講釈を聞かされてしまいます(笑)。

ま、それはそれでいいんですけど、「では今度、いっしょに味スタへ」となると話は具体的に進展しないのがよくあるパターン。そんな現状のなか、長谷部の言葉にはとても大きい意味があると思います。最後の最後まで立派なキャプテンシーでした。

日本代表、ひいては日本サッカーの今後について課題はたくさんありますが、ひとまず落ち着いてからということにしましょう。それにしても“ゼロか100か的評価基準”や“手の平裏返し的思考+発言様式”について考えさせられた3週間近くでありました。