これが本当の「絶対に負けられない」試合

W杯グループリーグも3巡目になると同グループの2試合が同じ時間に始まるものだから、日本時間20時30分キックオフの試合がなくなってしまった。最初からは無理にしても、帰宅するやいなや風呂もそっちのけで服を脱ぎながらテレビにかぶりつくという楽しい時間が習慣となっていたのだが、なくなってしまい物寂しいかぎりである。

世界の各都市でパブリックビューイングの様子をニュースで観てふと思った。パリでは凱旋門広場、ベルリンではブランデンブルク門広場、ソウルでは深夜3時過ぎにもかかわらず繁華街にある広場で地べたに座り込み、ビジョンを眺めて一喜一憂していた。日本のPVは知っているかぎりでは国立、埼スタ、東京ドーム、一部の映画館などの器物ばかりだ。

どうなんだろう、日本ではというか首都東京では、競技施設などではなくどこかの広場や天下の公道を会場に、ドーンとPVというわけにはいかないものなのか。有楽町マリオン前、新宿アルタ前、渋谷ハチ公前交差点……どこでもいいから歩行者天国状態にしてやるといいのになあ。日比谷公園でもいいし、新宿中央公園でもいい。浅草寺の境内だってかまわない。皇居前広場はまずいか。そうやって考えると東京には公園はあっても、広場って少ないのかもしれないな。

外国では屋外1ヵ所に5万人、10万人、ヘタすりゃ20万人とか集まる光景がしばしばある。大方が政治集会や大規模デモ・ストライキの類だったりするのだが、W杯のPVでも大人数が集まり心をひとつにして一喜一憂している。トシをとるにつれて雑踏が億劫になりつつあるが、たまにはこの国でもそんなことがあってもいいんじゃない? と思ってしまう。機会があれば参加してもいいのだが、防犯警備上の問題なのだろうか、今のところは聞いたことがない。

さて、明日はいよいよ決勝トーナメント進出をかけたデンマーク戦を迎える。きっと朝からテレビでも電車の中でも、話題はこの試合のことでもちきりだろう。あの人この人、みんな評論家になって試合への期待と予想を口にする。前回ドイツW杯ではなかった熱気がひさびさに戻ってきた。

それにしてもキックオフは午前3時30分。どうすれば生で観られるか、今から一生懸命プランをたてることにしよう。翌朝のワイドショーでキャスターの結果論を聞くのは避けたい。かくいう自分も明日は早朝から群馬へ出張仕事。帰宅後、睡魔に襲われるのは必至だけに、大いに不安を抱えている。キックオフまでずっとブブゼラを耳元で鳴らしてもらえば、確実に起きてられそうだが……。

とにもかくにも「ドローでいい」なんて気持ちは禁物。あまりにも軽々しく使われていたので食傷気味になってしまった言葉だが、これぞまさに本当の「絶対に負けられない」試合だ。明後日はうれしい気分で1日の始まりを迎えられることを心から願おう。