面白いのはこれから/vs.仙台

真夏日のホーム味スタ。試合終了の笛と同時にピッチ上に倒れ込んだのは東京の選手の方が圧倒的に多かった。運動量が激しかったのは仙台より東京だった内容だけにもっともなことだ。疲れきった身体に浴びせられるブーイング。「今日こそトンネル脱出を」の期待が高かっただけに、サポーターが手荒い仕打ちに出るのもある程度仕方あるまいが、選手にとってはさぞかし悔しくつらかったにちがいない。

そのなか、ひときわ長く立ち上がることのできない選手が一人いた。誰か思えば、背番号5・長友だった。今日のスポーツ新聞記事で知ったことだが、号泣していたという。できれば人前で涙など見せたくないだろうが、込み上げてくるやるせない感情を抑えきれなかったのだろう。何年か前、今ちゃんも敗戦後に涙を見せたことがあった。「どうしてうまくいかないんだ」というジレンマ。ずっと前だが自分にもそのような経験があるので気持ちはよく分かる。

広島戦と同じようにシュート数では相手を圧倒的に上回っていた。しかし決められない、決まらない。今の東京が抱える問題点といえばわずかにこの一点だけなのだが、ここまでくるとぼちぼちおなじみの「○○やめろ!」「戦力補強しろ!」という声が聞こえてくる。クラブに対し勝利の術を常に求めていくのがサポーター、という意見もある。全面的には否定しない。ただし現在の厳しい状況を打開するうえで必要なのは、間違いなくそんなことではない。

前回の広島戦後にも書いたことなのだが、何かのはずみでも何でもいいからとにかく1点取ることができれば、いろいろなことすべてが快方へ向かうはず。それがきっかけとなってきっと本来の姿を取り戻してくれるにちがいない。不必要に緊張感やプレッシャーを高めるのではなく、もっと会話を重ねてリラックスした感覚で……と、僕なんかがここでエラソーにこんなこと言う前に、すでに取り組んでいると思いたい。

城福さんのサッカー理論に魅力を感じて移籍・入団してきたり、移籍を踏みとどまったりした選手がたくさんいる。治療リハビリ中の米本だってそのひとりだ。監督としてはまだ発展途上だと思う。だが今後も失敗や苦しい経験を繰り返しながら、きっと日本人としてはトップクラスの監督になると信じている。

今、ここで「今年もダメか」と諦めてしまってはもったいない。面白いのはこれから。不調の底から這い上がるドラマのスタートが、もうすぐそこまでやってきているのだから。