“平松に泣かされた”ホーム最終戦/vs.神戸

後半42分。スコアレスドローに終わっても不思議じゃない展開ながら、スタンドの観衆からは「絶対に1点決まって、しかも勝つ」という空気に満ちあふれていた。達也からの右CKに、ニアに上がっていた平松がドンピシャのヘッド。待望の先制ゴールで1−0。期待は現実に変わった。

待ちかまえていたように藤山を投入する。もう少し早い時間に先制点が決まっていれば、城福さんのことだから浅利を出したろうなぁ(試合後のコメントによると、やはりそのつもりだったようだ)……などと考えながら「眠らない街」を歌っていたら、数分後に家本レフェリーの終了の笛が鳴った。

ひさびさに先発の平松、草民、北斗は、各自これまでの課題を確実に克服し、かなり東京のサッカーに順応しつつあるように見えた(本当は大竹も加わってほしかったけど)。来シーズンはもっともっと活躍してくれるにちがいない。評価は人によって違うかもしれないが、なかなかのナイスゲームだった。

試合後のセレモニーが涙ずくめのスピーチ連発になることは当然ながら予想された。僕もきっと、その場面になったら目頭を熱くしてしまうにちがいない、と独りよがりにそう予感していた。だが、涙の場面は試合のヒーロー・平松によって予定よりも早い時間帯に前倒しして訪れた。

平松のヒーローインタビュー、よかったですねぇ。感激しました。移籍してきた今シーズン、開幕の新潟戦で先発するも4失点、続く第2節の浦和戦でも先発し3失点で2連敗。失点の原因のすべてがCBにあるわけじゃないが、やはり責任感が強い性格もあって相当へこんだ様子。

それ以降、先発はおろかベンチにも入ることが少なくなってしまった。新しいチームで経験のない戦術に悩む日々。だから、昨日の先発は胸に期するものが強くあったにちがいない。そんな1年を送ってきた平松だけに、あの決勝ゴールを決めた喜びがいかに大きかったかはインタビューからもよくわかった。

いつもの明るい表情で話し始めた平松だったが、途中で言葉を詰まらせたらもうダメ。こちらも思わずもらい泣きしてしまった。再び笑顔に戻ると、得意の“ジョッキで乾杯”でスタジアムは大いに盛り上がった。いい男だねぇ、平松は。来シーズンはずっと先発張れるといいな。

「トシをとると涙腺がゆるくなって……」とよく言われる。自分もその域に入ってきたかどうかは定かではない。ただ、周りの老若男女も、平松から始まり監督〜藤山〜浅利のスピーチではジンワリしていたみたいだから、けっして安っぽい涙じゃなかったことは間違いなさそうだ。

たまには泣き虫になるのも悪くない。しかも良質の理由に基づく涙なら、それはなおさらいいもんだ。今シーズンは終盤になってそんなことが続けざまにあったのだから、ここ数年ではかなりよいシーズンと言ってよいのだろう。でも僕も含めて応援者は欲深なもんだから、ついつい「来シーズンはもっと……」などと考えてしまうのだよなあ。