嫌煙の嵐の中で

4月1日からJR首都圏のすべての駅で全面禁煙になったというニュースが、立ち飲み屋のテレビから流れている。5人ほどいた客は、どうやら僕も含めて全員がスモーカーのようだ。

カウンターの中のオヤジさんが「いやあ、もうそういう時代なんだよ。タバコなんて吸ってるのはダメ人間ってわけ。てことで、この店も今日から禁煙だかんね」と声を高めて冗談を口にする。威勢のいい常連が「そっか、じゃあこの店は客がいなくなっちゃうな。明日つぶれちゃうぞ」と切り返す。

まあそんなわけで、喫煙者にとって世間はますます狭くなっているようですな。そりゃ仕方ないでしょう、あれこれの病気の誘発源であることはどうやら明らかなわけだし。駅のホーム上でスパ〜と煙を吐くなど、間違いなく許されざる蛮行というわけですわな。

「しかしなあ、あの人は毎日走って酒もタバコもやらないのに早く逝っちゃったねえ」
「それに引き替えあんたは酒、タバコ、身体にいいこと、な〜んにもしてないのに長生きだよなあ。わかんないもんだ」
年寄り同士のこんなやり取りは酒場でよく聞かれる。ぼやき漫才のごとく繰り返される話題だ。無意味といえば無意味だが、聞きようによっては人生のひとつの真理か!? という気もしないではない。

タバコはアホらしい、と自分でも思っている。途中3回ほど止めながらも再開し、都合28年ぐらいだろうか。吸っているのは今や3mgという軽さの銘柄なのだから、もはや味わっているとは言い難い。吸わない環境にいれば吸わないでいられるわけだし。やめちゃえやめちゃえ! というのが周囲のノンスモーカーからのもっぱらの意見である。「いつだって止められるもんね」と突っ張るのが精いっぱいだ。

そういえば、今シーズンから味スタのコンコースに灰皿が消えた。試合前はゲートの外側、ハーフタイムは昨年通りに外まで下りていくスタイルだ(今年からチケットの半券を見せることになったが)。

あれもねえ、喫煙者の立場からエゴイスティックに言わせてもらえば、かなり虐げられた感じ。でも、これもしょうがないんだよなあ。たしかにコンコースで吸うのは非喫煙者にとって迷惑もいいとことだ。分かっていつつも、グダグダな試合でハーフタイムのあそこでの一服は頭を冷やすのにちょうどいい貴重な時間なんだけど……と言い訳をしてみる。

健康増進法制定以降、非健康的行為をする人や不健康状態にある人は、国の監視のもとどんどん追い詰められていく。もっともな部分があるのは認める。だが、精神面も含めての「真の健康」とは何なのかがもっと議論されてから制定されてもよかったはず、と思う。きっとこれも、屁理屈と切り捨てられてしまうのだろうな。