走れ長友!/vs.山形

ことあるたびに長友は言う。「自分はまだまだ。これからもっともっ上手くなりたい」と。中学時代、駅伝とサッカーを同時にやってきた。その後サッカーに的を絞り、ずば抜けたスタミナを武器に成長を続け、昨年大学在学中にもかかわらずFC東京でプロデビューを果たした長友。さらに急激な右肩上がりでレベルアップを果たし、日本代表の座に登り詰めた。人並みはずれた才能の持ち主であるとともに、大変な努力家なのだろう。

その長友が、開幕の新潟戦、それに続く浦和戦で昨年までと何かが違う凡庸な動きに終わった。2年目の壁なのか、はたまた城福監督のサイドバックを高めの位置に据えてさらに攻撃的に、という戦術にフィットできずにいたのか。前者は考えられない。では後者だとすれば、長友1人だけの問題とは言い切れまい。チーム全体のバランスが崩れているのが明らかだった。

そんな不安なコンディションのまま2連敗を喫し、早くも新シーズン3戦目にして背水の陣で臨んだ第3節・山形戦。内容よりも、勝利という結果を強く求めたい試合だった。勝つという事実が、どれだけ選手にとって自信を回復することにつながることか。

応援する側の立場とてそれは同じ。ズルズルと3連敗は避けたい。負けてはそのつど試合後2日ほどで気持ちを切り替えはするものの、フラストレーションが消えてなくなるわけではない。やはり“勝利に優る良薬なし”なのだ。

その山形戦は前半スコアレスで、後半10分に東京は羽生が決めた虎の子の1点を守りきって待望の今季初勝利を収めることができた。貴重な羽生のゴールは、左サイドが起点となった。石川からパスを受けた長友がドリブルでやや中央に切れ込み、PA左から中央のカボレへ。さらにカボレからショートパスを受けた羽生が左脚を振り抜き、ゴール左隅のネットを揺らした。スムーズな流れのファインゴールだった。

この得点シーンで光ったのは長友の動き。昨シーズン、東京で、あるいは代表で観る者の目を釘付けにしたのは、まさにこの突進力とスピード、それに勇気に満ちたプレーだったのだ。試合を通しても攻守の切り替えにかなり俊敏さが戻り、久しぶりにホンモノの長友佑都に会えた気がした。

小平では全体練習を終えた後にずっと居残りでボールを蹴り続けていたという。「もっともっと上手くなる」ためには、まだ身につけなければならないテクニックは数多くあるだろう。頭で考えるだけでは身につかない。だから練習を繰り返し、試合でそれを実行に移す。それしかない。

強靱な“ゴリラ”長友の活躍は、すなわち東京の浮上を意味する。楽しみになってきた。


↑試合後、山形サポーターを乗せたたくさんのバスが帰路につくところだった。
遠路ごくろうさまでした、また来てくださいね!