開幕前夜に我思う

今週月曜の夜、ひさびさに上京してきたアルビレックス新潟サポの友人Kと再会した。彼は練馬・武蔵関に住んでいたのだが、一昨年に発症して手術を受けた病気が昨夏に再発してしまったのを機に、郷里の新潟へ帰っている。地元の国立病院で手術を受け、その後は今日まで通院しながら治療を受けている日々だ。

高田馬場のBIGBOX前で待ち合わせより5分ほど早く着くと、Kはそれからまもなく「いやあ、ごめんごめん」という得意のセリフとともに姿を見せた。

なんだ、顔色も普通だし元気じゃないか。正直なところ、どれだけやつれてしまったかが気がかりだった。その様子を目の当たりにしたときにどんな対応をしたらいいのだろう、と考えると少し気が重くなったりもした。だがそれは取り越し苦労だったと思えるくらいに、まったく問題なく感じられたのだ。

とにもかくにも、昔からよく通った居酒屋へ直行する。「病人が酒?」と思われるだろうが、本人いわく「医者が言うには、ビールやサワーとかの炭酸系はよくなんだけど、焼酎や日本酒ならいいんだって。もちろん飲み過ぎたら一緒だけどさ、ガハハ」とのこと。ホンマかいな!? ま、いっか、少しぐらいなら。

本来なら病状のことはもちろんながら、Kが武蔵関に借りっぱなしのアパートをどうするかという問題など、話すべきところである。しかしそんな話は早々に終わってしまい、気がつけば話題はすっかりサッカーに切り替わっていた。

「それにしても、去年のアルビはエフシーに勝てなかったからなあ。ホーム、アウェイだけじゃなくて、鳥取でもやられちまったもんね。車を運転してあんな遠くまで行ったのにまたエフシーに負けたって、弟がさんざん悔しがってたよ。俺は入院してて行けなかったけど、行かなくて大正解!」
自虐的に笑いながら話すK。相変わらず“エフシー”の連発銃だ。「あのね、そのエフシーはやめてくんない?」と何度言っても効き目なしである。まったくもう、この新潟アヒルめ。

話は止まらない。お互いのクラブの今シーズンの展望や他クラブのこと、秋春制問題、代表戦の評価等々……。僕もKも、持てる素人サッカー知識をフルに働かせて意見し合う。多分に感情的な展開になりがちだが、これは毎度のことだ。

開幕戦の話にもなった。1週間後の3月7日、東京はホーム味スタでアルビと対戦する。Kは「来週の土曜、ひさびさに並んで一緒にみない? 試合を観てから新潟に帰ろうと思ってるんだ」と切り出してきた。しかし僕は「仕事で行くことはできないのだよ」と告げた。するとKは陽気をよそおって話を続けた。「仕方ないね〜、また今度の機会にしよう。久しぶりにアルビがエフシーにひと泡吹かす試合だったのになあ」と。

いかにも元気そうに見えるKは、新潟に帰れば再び通院しながらの治療生活に戻る。リーグ開幕戦の東京対新潟という、2人にとってはまたとない好カードを観戦するつもりでいたKの期待に応えられないことが、残念でならない。

「今シーズン、新潟のホームゲームに行かれるようなら、そのときにでも」――そんな曖昧な話をして別れたが、ぜひ実現させたい。引き続き、Kには病魔を克服してくれることを願うばかりだ。

何はともあれ明日は開幕戦。いろいろな思いを胸に、2009年シーズンがスタートする。