0−0に泣く/vs.清水(ヤマザキナビスコC)

台風は早めに通過して雨もあがった。しかし、東名が通行止めになったり、新幹線や在来線が一部不通になったりで、現地までたどり着けなかった方は本当にお気の毒。あれこれの予定を調整して「勝ち上がりを目指してアウスタヘ!」と向かったのだろうに、まったく予期せぬ邪魔が入ったものだ。

例によって僕は、滑り込みセーフでスポーツバーでテレビ観戦した。準決勝進出を果たすべく前半から攻撃的な東京の試合運びを観ているのは楽しかったし、シュートのたびに力が入り声も出た。最後の最後まで勝利への執念を見せてシュートを撃ち続けたが決まらず0−0に終わり、悔しくも残念なことにナビスコ2連覇の夢は消えた。

試合の感想を素直に言うなら「内容はよかったのに惜しかった」。今シーズン、何度となく口にしてきたセリフだ。何度も何度も繰り返す「惜しかった」は、本当のところたぶん「惜しくない」のだろう。だから、本来は違う言葉で感想を述べるべきなのだが……自らのボキャブラリーの貧困さを恥じるばかりだ。

このように簡単に口にする「惜しかった」だが、実際にはそのグレードは何段階かに分かれている。A〜Eの5段階でもいいし、%表示でもいい、★の数で表しても何でもいいのだが、細かく言えばいろいろな度合いの惜しかった試合があるはずだ。単に点差だけが惜しい試合から、内容的にすばらしい試合まで、いろいろと。

ちなみに、今日の清水戦は「惜しい度」★5つが最高点とすれば★★★★といった感じ。今シーズンの惜しかった試合の中ではかなり高ポイントの部類に入る。その一番の理由は、シュートの多くがこれまでの試合以上にゴールの枠内に飛んでいたからだ。北斗も、リカも、大黒も、達也も、平山も、ナオも、みんなきっちり打っていた。

なんと次元の低い話、という意見もあるだろう。しかし実に大切なことだと思う。今シーズンの東京の最大の問題点は決定力不足。シュート数が多い試合でも、まずもって枠内に飛んでいないことが多かった。次はGKの正面ばかり。で、今回は少しだけ正面を外したコースへのシュートが多かった。これは紛れもない進化だ。

今季リーグ戦前節まで清水は42得点で、そのうち岡崎・藤本・ヨンセンの3人で26得点。一方、東京はチームで21得点。大いに問題はあるが、客観的に見て東京の選手が技術的に格段に劣るとは考えられない。プロ的に言えば技術的、戦術的な理由は数々あるのだろうが、素人としてはやはり「きっかけができれば」という抽象的な言い方に落ち着く。

そして今回、過去のエントリーでも何度となく書いてきたその「きっかけ」がいよいよやってきたとひそかに思っている。悪い要因のひとつであった選手間のコミュニケーション不足が、少しずつだが解消されつつあるように思える。この効果があと1、2試合のうちに結果に現れるとにらんでいる。

さらにここにきて、テレビに映る城福さんの目に光が戻ったように感じられる。以前よりベンチに腰掛ける時間が長くなったのは疲れているわけではなく、監督としての成長ととらえている。最近は選手に対し「落ち着いて攻めろ」という言葉を頻繁に発している。深い苦悩の底から浮かび上がってきた今、メンタル面は確実に上昇しているはずだ。