観てないなりの無念さ/vs.新潟

新潟戦というと、いつもここに書くのは新潟在住の友人・アルビサポKのことだ。東京から病気療養のために新潟市内の実家へ戻ってから2年目、ビッグスワンでの東京戦は2回目。昨年は行くことができなかったので今年こそ、というつもりでいたのだが、残念ながら早々と決まっていた仕事のために遠征は断念となってしまった。

試合前日の金曜夜、Kから電話が入った。明らかに酔っている。病気を患ってからも担当の医師からは酒を禁じられているわけじゃないので、上京した際には必ず顔を合わせて飲む。しかし生ビール1杯、ホッピー(あるいは酎ハイまたは日本酒冷や1杯)ですでに酔い始めてしまう。飲み過ぎてはいけないのでこれでいいのだが、弱くなった感は否めない。

電話の向こうの声を聞き「おいおい、今日は結構ゴキゲンだな、かなり飲んでるな」と言うと、「べーつにゴキゲンじゃねえって。明日のアルビ対エフシー、一緒に観たかったろ。まったく残念だよ」と新潟なまりの声が返ってきた。「わりぃな、行きたかったよ。でも今、アルビ絶好調だから負ける気がしないだろ」と持ち上げると、Kは「いやいや、そんなことないけどさ〜」とまんざらでもなさそうに笑った。

その後、例によって長話になった。W杯話題に始まり、最近の政治・社会情勢に話は移り、新潟の不景気ぶり、共通の知人友人の近況、それになぜかラーメンのことまで、2時間近くに及んだ。いいかげんキリがないので「ということで、また近いうちに東京に来いや」と話を締めくくりにかかると、「そうだね、行くよ。明日はしょうがねえからゴール裏に行って、わんちゃんにブーイングしてくるわ」と悪態ついてKは電話を切った。


翌日は仕事が遅くなってしまい、試合はスポーツバーのテレビでも観られずじまいになってしまった。「Jリーグタイム」の録画と、その後に伝わってくる話の数々で大まかな様子を知ることができた。勝てなかったことは非常に残念だし、今回のように結果だけポンとニュースで知るパターンはいつでも虚しい。現地まで応援に行った方々に対しては「応援、おつかれさまでした」と、妙にすまない気持ちが沸いてきてしまう。

1失点目はプロ初先発となった高橋の致命的なパスミスがきっかけになってしまったとのこと。リアルタイムで観ていない場合、こういう点については淡泊でいられるものだ、というか淡泊でいるしかない。月並みな言葉になってしまうが、高橋にはこれに必要以上に落胆することなく、小平でしっかりと再びやるべきことをやってアピールしていってほしい。

結果とは別に話題に上っていた試合後の梶山・権田のバトル。テレビにもしっかり映っていたようだが、これはリアルタイムでぜひ観てみたかった。こんなふうに言うと実に野次馬根性みたいに思われるかもしれないが、そう思ってしまうほどに東京にとっては貴重な出来事だったと思う。FC東京でこんなふうに表立った形でのプレーについての選手同士の口論など、少なくとも記憶にない。

今までなかったのが不思議なくらいなのだが、それがまた東京らしいと思われる部分であり、同時に今ひとつ骨太な強さやたくましさが感じられない点でもあった。だから今回の一件は、実はクラブの歴史を塗り替えるに値する。ことさらに囃し立てるわけではないが、自分なりにどうしても言いたいことがあれば言い合えばいい。同じ目標を持つ者同士であれば、きっと意義があるはずだ。ただし、ただの不毛なケンカに終わらぬように。梶山はブログで一件について報告していたが、あれでいいと思う。

それにしても酷暑の中、依然として東京にとっては厳しい戦いが続く。身体はもちろん、思うように結果が出ないと気持ちまでも折れてしまいかねない。選手の何分の一、何十分の一かもしれないが、我々応援する方もなかなかにして楽じゃない。こんなに暑い夏だし、批判や愚痴でフラストレーションを解消するのも悪くはないが、それは一過性のストレス減少手段にすぎない。やはり根本にあるのは愚直ながらも、ただひたすらに応援するということになるのだろう。スルガ杯はまたトンガッていくぞ。


日曜朝、悔しいながらもアルビサポKに勝利の祝福メールを送ったら、昨夜「結果はアルビが勝ったけど内容はエフシーだったよ。青赤のユニフォームを見ると商店街のフラッグ思いだすね。東京に行って飲みたくなったからお盆にはよろしく」と返事が送られてきた。商店街とはKが長年住んでいた練馬区武蔵関のこと。たしかにあの街にも青赤バナーフラッグが並んでいたっけな。

Kはよく酒に酔うと「アルビは故郷新潟のクラブだから応援しなくちゃいけない宿命にある。だけど本当に応援したいのは人生の半分以上を過ごした東京のクラブであるエフシー」と口にする。おそらく半分以上本心なのだろうが、「そんな肩ひじ張らずに応援しちゃえば?」とけしかけても、かたくなに拒否をする。まあいい、盆休みにはいつもの高田馬場か吉祥寺の店でそのあたりをまた突っ込んでやろう。